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瓦礫の街で~Reminiscence~

​発表 ​​2010・10・14

作詞 Phaz_Quasaric-Orbit

作曲 Phaz_Quasaric-Orbit

Singer Megpoid Phaz_Q-O

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懐かしい 色彩
風は 君の記憶
儚い 想いが
二人を つないでいたなら


ずっと 離れぬように
守る 力があれば良かった
全てをかけて
君の笑顔の隣に


戻れない あの時
君を 失った日
欠片は 今でも
ここに…


優しい 眼差し
街は 君を包む
冷たい 大地に
悲しい 藍が降りてくる


君の 影を探し 
彷徨う 瞳に
涙溢れて
全てを隠す
君の背中も未来も…


赤く染まる空 慟哭の闇
探して…探して…
それでも…届かなくて…
ごめんね…ごめんね…

 


ずっと離れぬように
君の隣にいればよかった
全てを捨てて
君の笑顔の隣に


忘れない あの日々
君と過ごした日々
今でも
瓦礫の街で…

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Phaz_Q-OがMegpoidによって発表した楽曲。

Phaz_Q-Oによる人と竜の創作ストーリーがもととなる楽曲「Az」の

サイドストーリー楽曲として「瓦礫の街で」のタイトルで制作された。

Azは竜の子供と人間の少女が出逢い、世界中で争い合う竜を人を繋いでいく物語

となっているが、「瓦礫の街で」はその作中

戦火により焼け落ちた瓦礫の街が舞台となる。

 

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それは人間と竜の世界が交わり始めた頃の話
集いを成し、道具と技を操る人間と
強靭な身体と火を操る竜は争いを繰り返した。

人間は竜の棲む森に分け入り、自分たちの世界を広げようと試みたが
竜は空から人間の街を襲い、その大きな脚と炎で破壊の限りを尽くした。

 

ある街にまだ若い夫婦がいた。
夫は人の良い医者で街の内外の家々を訪ねては人々の傷や病を診て周った。
妻は絵描きで自らの作品を作る傍ら街の身寄りの無い子供たちにも絵を教えていた。

時にぶつかり合う時もあったが二人は互いを尊敬し、

それぞれの道をいつも確かめ合いながら暮らしていた。

夏の終わりのある日、夫は街はずれまで、いつものように仕事に出かけていた。
妻は家で一人、子供たちの描いた絵を嬉しそうに部屋に並べていた。

 

遠く西の空から馬の嗎にも似た音が聴こえた。
妻は驚いて外に飛び出した。
日が沈んで間もない、薄暗くなった空を見上げると

真っ黒な数えきれない程の竜の影が街を覆っていた。

竜は次々に街に降り、巨大な脚で家々を踏み潰した。
空からは青白い炎の柱が幾筋も伸び、通りを駆け抜けていった。

妻は先程帰したばかりの子供たちの家々を駆け回り、

街から離れた森へと逃げるようにと伝えて周った。

程なくして夫も街の異変に気が付き、患者の家を出た。
あたりは炎に包まれ壊された建物の瓦礫があちらこちらの道を塞いでいた。

逃げ惑う人の流れに逆らい、必死の想いで家に帰ったものの、

そこに妻の姿は無く、夫は再び外へ出た。


空は、街を焼く炎で赤く赤く染まり、遠い暗闇からは街の人の泣き叫ぶ声が聴こえていた。

ただひたすらに妻を探し続けた夫だったが、竜が去り朝が訪れるより少し早くに
まだ炎の残る街で瓦礫に埋もれ、顔の半分が黒く焼け焦げた妻を見つけた。

夫は妻に覆いかぶさるように蹲り、何度も何度も謝りつづけていた。

それから、一人、また一人と生き残った人間達も瓦礫となった街を去っていったが
夫だけはただ一人、街に残っていた。


誰もいない瓦礫の街で、藍色の空が降りる夜を超え、記憶の中の妻を探し、
燃え残った絵と妻の暮らしたこの街の風と共に。

今でも瓦礫の街で…

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楽曲は1番のみの状態で2010年に発表され、フル版を望む声が多かったことから

翌年フル版となる「瓦礫の街で~Reminiscence~」を製作したものの、

直後に東日本大震災が起こったため

楽曲の内容も考慮し発表を自粛。

その後、各方面からの働きかけもあり、数年を経てPhaz_Q-O自身が

楽曲の発表を決断し、オリジナルミニアルバム「イオンテイル」に収録された。

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